新しい事業の未来を左右するソフトウェア人財への実践的リスキリングとは
車載分野では自動運転やEV化などの技術革新やビジネスモデルの変化に対応するために従来のハード・メカ開発者をソフトウェア開発者にシフトするためのリスキリングを進める企業が増えています。車載分野に限らずDX推進のためにソフトウェア人財を確保する必要に迫られています。ここでは、ソフトウェア人財へのリスキリングを効率的かつ確実に進めるための方法を紹介します。
目次
1.EVシフト加速によるエンジン部品メーカーの“生き残りのためのリスキリング”
車載分野において、EVシフト加速の影響によりエンジン部品メーカーは生き残り戦略の1つとして、制御ECUを中心としたシステム開発への転地やソフトウェアサービスの事業創出が急務となっています。
しかし、メカ・エレキ人財を中心とした部品メーカーでは、容易に開発に必要なソフト人財を確保できないため、社内の技術人財を活用し、ソフトウェア技術者に転換をはかるリスキリング(Reskilling)を行う会社が増えています。リスキリングによりソフト技術の手の内化も同時に進めることができます。
リスキリングと似た概念としてアップスキリングがありますが、こちらは、既にソフト開発実績のある人財に対し技術革新に必要な“新たなソフト技術”を“追加“教育することを言います。
2.多様性に富むリスキリング対象者に合わせた“ソフトウェア教育戦略の必要性”
リスキリングも従来のソフトウェア教育と内容的には同じです。しかし、一般的にリスキリングの対象者は、自らの専門知識を活かした実務経験を持っているものの、専門技術分野や業務経験、年齢などはバラバラで多様性が高く、前提となるソフトウェア知識が少ない場合が多いと言えます。そのため、限られた期間内に「期待する実践力」を身に付けるためには、その特徴を理解して、目的や対象者に合わせた教育戦略やきめ細かい実施方法を考える必要があります。
3.『実践力強化』を重視したソフトウェア人財育成全体像
リスキリングを行う組織が求めているソフウェア人財は、リテラシー(知識)はもちろんですが、コンピテンシー(行動特性=実践力)を身に着けた人財です。
コンピテンシーを習得するには、実開発に参画し場数を踏むのが一番ですが、仮想プロジェクトでのPBL(Project Based Learning)や、より実践に近いOJT(On-the-Job Training)などの方法がとられることが一般的です。
OJTと一言でいっても開発する内容や実施する環境はそれぞれ異なります。それぞれの条件下で最適な教育効果をあげるためには、何を目的・目標に何をどうやって教えて、育成効果をどう測るのかといった、教育全体の設計すなわち「インストラクショナルデザイン(Instructional Design)」が必要です。
研修が終わったときにどのようなスキルをどのレベルまで身に着けていて欲しいのか、そのためには何をどのように教えるのが効果的かつ効率的なのかをしっかり考えて、育成内容を設計する必要があります。
リスキリングを行う組織の事情として、元々ソフトウェア人財が居ない中でOJTを行う環境を準備しなくてはならない場合も多いので、ここは社外も含めた教育実践の場を準備する方法を考える必要があります。また、社外であっても、教育の実践においては、きめ細かくフォローすることが必要です。
4.成果物は人財!改善可能で効果的な“PLAN-DO-SEE”を回す育成プロセスとは
人財育成プロセスを「成果物である人財」を開発するプロセスであると捉えると、一般的なソフトウェア開発プロセス同様に要求分析、アーキテクチャ設計(戦略立案)、研修設計、実施、評価という流れに当てはめることができます。V字プロセスに合わせると、左側が「PLAN=要求・戦略・詳細計画」、下が「DO=教育実施」、右側が「SEE=教育効果測定」となり、PLANとSEEはそれぞれの段階で対応付けられます。期待と結果が異なる場合は、どの段階の計画が結果に影響を与えたかを分析し改善することも可能です。
効率的な教育を行うためには、目標(ゴール)の明確化が重要であり、育成ゴールを具体的にイメージし共有することで、ゴールに最短で到達するための戦略やそれを実現するための研修内容に落とし込むことができます。既存の研修を組み合わせて利用する場合でも、ゴールに対するギャップを明確化することで、より組織の特性に合った効率的かつ確実な育成を行うことができるようになります。
開発同様、人材育成についても上流工程が大事だといえます。
5.インストラクショナルデザインにおける人財育成ゴールの明確化と人財要求定義
一般的な研修でも研修ゴールは設定されますが、インストラクショナルデザインでは最初に更に上位の“人財育成ゴール”に遡って検討します。組織方針、目標、戦略に合わせて将来必要な開発体制や必要な専門スキルを考慮して求める人財像(人財に対する要求事項)を明確化します。
人財に対する“要求事項”であり、扱う対象が“要求”であるので、ソフトウェア開発で用いられている要求分析の手法を活用することで、効率的かつ抜け漏れの少ない要求定義が可能となります。
下図は、ソフトウェアの要求定義手法の1つである、USDMを使って人財要求を整理したものです。求める人財にできて欲しい振る舞いをCan-Do形式で記述し、開発技術スキルや要素技術スキルなどの観点でグループ化することで、組織の求める人財要求を洗い出し整理することができます。
ここで整理した人財要求を基に制約条件下で有効な育成戦略を立案したり、教育効果(スキル成長度)の測定のベースとして活用したりします。
6.実践力強化の鍵!効果的な0JTにするための“失敗からの学び”と“事前教育”
エクスモーションではこれまで、技術トレーニングや、eラーニングを行う中で、「実践力強化」のための指導方法の概念を整理し蓄積してきました。これらのノウハウを基にリスキリング支援を進める中でさらに重要なポイントを追加し、実践の中で改善を進めています。
特に重要なポイントとしては、ソフトウェア技術は範囲も広く常に進化しているため、限られた期間内ですべての技術内容を教え込むことは困難、ということです。
必要なのは常に新しい技術に興味を持ち、どんな技術に対してもまずは全体を理解し、原理原則に立ち返って理解する。課題にぶつかった時には論理的に考え結論を導き出す“仕事の進め方”を学ばせることです。そのためにOJTは最適と言えます。
OJTでは計画的・意図的に「失敗」を経験させることができます。実開発の中でも失敗から学ぶことは非常に多く、失敗を経験することで深く考察し改善方法を考えるなど課題対応力が上がり技術者としての成長に繋がります。
また、OJTは実践形式での教育となるので、必要な前提スキルを満たしていない場合は、事前に基礎研修でスキルレベルを向上させる必要があります。
基礎研修の企画においてOJTで必要となる技術要素やレベルを明確にし研修内容に落とし込むことで、スムーズなOJTが実施できます。既存の研修を取り入れる場合でも、可能な範囲でインストラクショナルデザインで検討した内容を取り入れることで教育全体として効率的な育成が行えます。
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7.コンサルタントが教える成功の秘訣
人財育成もソフトウェア開発同様、いかに要求仕様を明確化するかが重要です。ソフトウェア教育に限らず、効率的な教育を行うためには、育成目標(ゴール)の明確化が重要であり、ゴールを具体的にイメージし共有することで、ゴールに最短で到達するための戦略やそれを実現するための研修内容に落とし込むことができます。
また、教育の難しいところは、対象が人であることです。いかに綿密な計画を立てたとしても、育成対象者のポテンシャルや状況により効果は変わってしまいます。そのため教育中のモニタリングと改善・フォローは非常に重要です。スキルの向上度合いやモチベーションの変化などを細かくモニタリングする仕組みを用意し、個人の特性や研修中の変化状況に合わせて、教育内容も改善していくような進め方を行うことで、確実な育成を実現することができます。
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リスキリング人財育成支援(トータルコンサル)
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