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製造業エンジニアのための 生成AI活用スタートガイド

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製造業エンジニアのための 生成AI活用スタートガイド

~日常業務への生成AI活用にむけた実践的活用法~

はじめに

 製造業のソフトウェア開発現場では業務効率化への圧力が高まる中、その解決策として「生成AI」がホットワードになっています。しかし日々の業務に追われたり、どう活用すればよいか分からないなどの理由で生成AI活用にトライできていないエンジニアが多いのが実情です。そこで本ガイドでは、忙しい現場でも無理なく始められる生成AI活用の実践手法を、製造業特有の要件を踏まえながら具体的に解説します。

生成AI導入を阻む壁

導入方法が分からない

 用途や効果が明確な従来の市販ツール(生成AIを用いた市販ツール含む)の導入とは異なり、汎用的な生成AIの活用は用途も効果も自分たちで検討、計測する必要があります。ゆえに「導入までにどんなステップがあるか分からない」「自分たちの業務に本当に適用できるのか不安」「上司や経営陣への説明の仕方が分からない」といった声が多く聞かれます。

実践的情報の不足

 一般的な生成AI活用事例は豊富にありますが、「製造業の開発現場で」実際に使える具体的な手法、事例などの情報は、まだまだwebなどで手に入りにくいのが実情です。

製造業特有の制約

 製造業においては機密情報のセキュリティが厳しく、一般的な活用方法をそのまま適用できないケースが多くあります。また製造業のシステム、ソフトウェアには極めて高い品質が求められるため、間違いを排除できない生成AIの活用には一工夫が必要です。

これらを踏まえた上で、どのように生成AIを導入していけばよいか見ていきましょう。

段階的導入アプローチ

 製造業における生成AIの導入は、以下の3段階で行うことをお勧めします。

段階的導入アプローチ

フェーズ1 検証期(1-2か月目)

 まずは個人レベルでスモールスタートします。コードレビューやドキュメント生成支援など、リスクの低い業務で効果を体感できると理想的です。この段階では社内承認などの根回しは不要なので、週1時間程度のスキマ時間と無料の環境を利用して、自由にトライしてみましょう。

フェーズ2 試行期(2-3か月目)

 次にチーム単位での本格的な試行を開始します。フェーズ1で試行したものをそのまま洗練する場合と、例えばフェーズ1でドキュメント生成支援を試して、フェーズ2ではそれを設計書生成支援に進化させる場合とがあります。いずれの場合も業務にどのように適用するか、プロセスの検討が必要になります。またROI(投資利益率)、つまりかかるコストに対してどれだけの定量的効果があるかの測定もこのフェーズで行います。

フェーズ3 本格運用期(3か月目以降)

 フェーズ2でプロセスを確立でき、ROI含めて上司や経営陣の承諾を得られれば、最後はいよいよ組織全体での標準的な業務フローに組み込みます。業務プロセスの正式ドキュメント化、セキュリティポリシーの整備などが求められます。また継続的に効果測定を行うことが望ましいです。

現状の課題と目指す姿の明確化

現状の課題と目指す姿の明確化

前章のアプローチに基づいて、テストケースの作成支援を題材に例を示します。

現状の課題と目指す姿の明確化

 最終的に上司や経営陣に説明するうえでは、現状どのような課題があり、目指す姿はどのようなものか、という情報が必要不可欠です。

ここでは仮に以下のように設定します。

【現状の課題】
  ・テストケースの導出方法が確立されておらず、人によってレベルがバラバラ
  ・そのためテスト品質が低く、市場での不具合が多発している

【目指す姿】
  ・仕様書に基づいた網羅的なテストケースをAIを用いて導出する
  ・市場不具合の80%をテストで検出できることを目指す

生成AIへの指示プロンプト例

以下のように生成AIに指示してください。
------------------------------------------------------------------------------------------------------------
添付の仕様書から、テストケースを生成してください。
製造業の品質基準に準拠し、境界値テスト、異常系テストを含めてください。
------------------------------------------------------------------------------------------------------------

効果測定例

 テストケース作成工数、不具合検出数、エンジニア満足度などの指標が考えられます。
 生成AIに指標やその測定方法を考えてもらうことも可能です。

業務プロセスへの組み込み

 PFD(プロセスフローダイアグラム)で生成AI活用時の業務プロセスを整理し、必要であれば手順化すると良いでしょう。
また生成AIの成果物品質を担保するため、

 ・生成AIツールの使用履歴を品質記録として保管
 ・どのドキュメントから引用した情報かのトレーサビリティの確保
 ・ヒトが最終責任を持つためのレビュー

などをプロセスに組み込む必要があります。

開発技術の導入もAIで

 ここまで示したように、汎用的な生成AIを導入することで開発業務の効率化を実現することができます。一方で更なる開発の効率化や、品質の向上も図る場合は開発技術(要件定義手法、モデルベース開発、CI/CDなど)の導入が必要不可欠ですが、その導入にも生成AIを活用することができます。汎用的な生成AIを活用することもできますが、開発技術のナレッジがなければならないことなどの理由から、専用の市販ツールを導入する方が高い効果を期待できます。

生成AI×要件定義 支援ツール「CoBrain」

 CoBrain(コブレイン)は生成AIを活用した要件定義支援サービスで、要件定義書の作成やレビューを支援します。(作成支援機能は2025年秋頃提供開始予定)

特長

 ・製造業の組込みシステム開発に対する長年の支援から得たナレッジを活用
 ・要件定義書のフォーマットを問わずレビュー可能
 ・段階的に要求と仕様を定義できる要件定義手法「USDM」を全面サポート

期待される効果

 ・要件定義書レビュー工数の大幅削減
 ・レビュー品質の標準化と向上
 ・レビュアーが本質的な議論に集中できる環境の実現
 ・下流工程での手戻り削減

 本ガイドで示した方法で、汎用的な生成AIを用いて要件定義書の作成やレビューを行うことも可能ですが、要件定義手法に対する深い知見がなければ精度は限定的です。その点、CoBrainは要件定義手法のナレッジがふんだんに取り込まれているため、汎用的な生成AIを用いるよりも高い効果を発揮します。

CoBrain(コブレイン)

開発技術リテラシーを習得できるeラーニングサービス「Eureka Box」

 CoBrainなどの生成AIサービスを活用して要件定義、設計、実装、テストを行う場合でも、開発技術に関する基本的なリテラシーを身につけることが不可欠です。対話型AIを活用する場合は適切な指示や質問ができる必要がありますし、AIが生成した成果物に対してはヒトによるレビューが必須です。

 様々な開発技術のリテラシー習得におすすめなのが、システム/ソフトウェア開発技術をオンラインで学習できるEureka Box(ユーリカボックス)です。

特長

 ・品質に大きく寄与する上流工程を中心とした豊富な技術コンテンツ
 ・様々な開発現場支援を通じて得た教科書にはない実践的ノウハウ
 ・チャットやオンラインMTGでコンサルタントに質問や相談が可能

Eureka Box(ユーリカボックス)

生成AIを活用した開発への切り替えを早急に実現したいなら

 現場のエンジニアによる生成AI活用から、ボトムアップで活用の幅を広げていくアプローチは非常に有用です。一方でさらに早急に、かつ大規模に生成AIドリブンな開発に切り替えたい場合は、外部の力も活用することが有効です。
 我々エクスモーションは、日本を代表する製造業企業の開発現場の様々な課題を解決してきた実績があり、その豊富な知識と経験を活かした最適なご支援が可能です。

 社員の皆様がAIを効果的に活用し、より質の高いソフトウェア開発を実現できるよう、全力でサポートいたします。

エクスモーションのコンサルティングサービス

おわりに:明日から始める第一歩

 小さな成功体験を積み重ねることで、チーム全体、そして組織全体での生成AI活用が自然と拡がっていきます。製造業の競争力向上に向けて、生成AIという新しいツールを効果的に活用していきましょう。

株式会社エクスモーション コンサルタント 松井 良太

執筆者プロフィール

株式会社エクスモーション コンサルタント

松井 良太

専門分野:

USDM、MBD、自動車、機能安全

エクスモーションが提供する関連サービス

CoBrain

要件定義に特化した、文書作成者とレビュアーのためのAI添削サービス。要件定義書や要求仕様書をAIが瞬時に添削し、レビュー負荷を軽減。スムーズな要件定義を促進します。

生成AI現場活用

業務自動化や効率化、新たな価値創出を目指します。

要求仕様書作成手法導入支援サービス

企業が効率的かつ効果的に要求仕様書を作成するための手法やプロセスを導入・改善する支援サービスです。これにより、プロジェクトの成功率向上と開発コストの削減を図ります。

PFDの活用とプロセス定義

多くの企業で活用されているPDF(プロセス・フロー・ダイアグラム)を活用し、効果的にプロセスを定義するための支援を行なっています。

ソフトウェア開発技術が学べる オンライン学習
「Eureka Box」ユーリカボックス

要件定義から検証まで、V字開発の全体が月額で学び放題
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