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AI時代に進化する、組込みソフトウェア開発の3つのパラダイム

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AI時代に進化する、組込みソフトウェア開発の3つのパラダイム

デジタル化とAI技術の急速な進化は、組込みソフトウェア開発の世界に歴史的な転換点をもたらしています。これまで培ってきた手法とAIが融合することで、開発のあり方は劇的に変化し、私たちは新たな技術選択に迫られています。本稿では、この変革期における3つのパラダイムを整理し、それぞれの本質と未来への展望を解説します。

1. 従来型開発:信頼性と効率性の基盤

「従来型開発」(ルールベース開発とも呼ばれます)は、人間が主導する伝統的なプログラミングとソフトウェアエンジニアリングの手法です。MISRA-Cなどの厳格なコーディング規約に基づき、同じ入力に対して常に同じ出力を保証する「決定論的制御」が特徴です。予測可能性と検証可能性が最重要となる、医療機器や航空機制御、原子力システムといった安全クリティカルな領域で、その価値は今なお揺るぎません。
しかし、この手法は手作業中心であるため、開発効率の限界や、システムの複雑化への対応に課題を抱えています。熟練技術者の知識継承問題や、新技術の取り込みに時間がかかるといった側面も、無視できない現実です。

2. AI支援型開発:生産性の変革

AI支援型開発:生産性の変革

AI技術の進化が、この課題に光を当てました。AIを強力なツールとして活用しながら人間が主導する、効率化された開発プロセスである「AI支援型開発」は、その核心に生産性の飛躍的な向上を据えています。

私たちはAIを、これまでソフトウェアエンジニアリングの実践を妨げてきた煩雑な作業プロセスを取り除くための「武器」と捉えています。例えば多岐にわたる中間成果物(詳細設計書、テスト仕様書など)の作成や、複雑なロジックのコーディング、テストケースの設計といった作業の大部分をAIが担うことで、エンジニアは本質的な創造活動に集中できます。これにより生産性と同時に、品質の向上も両立させることが可能になります。

AI支援型開発が適している領域

AI支援型開発が適している領域

  • 次世代産業機器: 多様な動作パターンと高度な処理が求められる機器において、AIによる効率的な開発と品質向上が競争力を生み出します。
  • スマート車載システム: ADASなどの先進運転支援システムでは、複雑な機能を効率的に開発するためにAI支援が有効です。
  • IoTエコシステム: 多種多様なデバイスが連携するIoTシステムでは、AIによる自動化されたコード生成とテストが開発速度と品質を両立させます。

3. 統合AI活用型開発:制御の革命

そして、AI技術のさらなる深化は、これまでの開発の枠組みを超えた、全く新しい可能性を提示しています。「統合AI活用型開発」(エンド・ツー・エンド開発とも呼ばれます)は、複数のAI技術(LLM、拡散モデルなど)を密接に統合し、制御の概念そのものを変革する革命的アプローチです。

このパラダイムは、従来の開発手法と決定的に異なります。過去の手法では、人間が想定できる範囲の制御しか実装できませんでしたが、統合AI活用型開発は、AIが自らの頭で考え、状況に合わせて振る舞う能力を獲得することで、これまで作れなかった複雑な制御を実現します。これは、単に開発プロセスを効率化するのではなく、モノの振る舞い方そのものを変えるものです。

統合AI活用型開発が適している領域

  • 次世代家庭用ロボット:未知の家庭環境に適応し、多様なタスクをこなすロボットでは、AIによる柔軟な判断と制御が欠かせなくなります。
  • 完全自動運転:あらゆる道路状況に対応する完全自動運転では、認識・判断・制御の統合AIによる同時並行処理が実現の鍵となります。
  • 先進製造システム:多品種少量生産に柔軟に対応する次世代製造システムでは、AIによる環境認識と適応的な制御が生産性向上の核心となります。
統合AI活用型開発が適している領域

3つのパラダイムの相互関係と未来

これらの3つのパラダイムは、それぞれが独立したものではなく、相互に補完し合う関係にあります。安全クリティカルな部分では「従来型開発」の信頼性を保ちつつ、開発プロセスに「AI支援型開発」を導入して効率を高める。そして、将来的には「統合AI活用型開発」を組み込み、システムに新たな価値をもたらすハイブリッドなアプローチが主流となるでしょう。

エクスモーションの組込み開発ソリューションと「AI支援型開発」への進化

エクスモーションはこれまで、組込みソフトウェア開発における長年の経験と知見に基づき、品質向上と開発効率向上という、お客様の二大課題を解決するためのソリューションを一貫してご提案してまいりました。本ガイドブックでは、上記で解説した3つのパラダイムのうち、特に「AI支援型開発」を実現するための具体的なアプローチや、AIを「武器」として活用し、どのようにエンジニアの生産性と品質を飛躍的に向上させるかという、具体的なソリューションを掲載しています。

さらに、未来を担う若手エンジニアの取り組みとして、ETロボコンという実践的な場で、生成AIを積極的に活用した挑戦のルポも掲載しています。彼の試行錯誤は、AIがもたらす開発現場のリアルな変革を理解するための、非常に良い参考になるはずです。

AIを組み込み開発の強力なパートナーとするための知恵と手法が詰まった一冊です。ぜひ、貴社の未来のシステム開発の一助としてご活用ください。

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